こんにちは。久喜図書館の芸術・文学資料担当です。
10月26日(土)に、久喜図書館で文化講座を開催しました。毎年開催している当講座、今年は下掛宝生流(しもがかりほうしょうりゅう)能楽師の安田 登(やすだ のぼる)先生を講師としてお招きし、「身体感覚で読む古事記〜千年以上昔の日本人は何を感じていた?」と題した講演を行いました。
安田先生は古今東西の古典に精通しており、能楽師のワキ方として海外も含めて活躍するかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、東京を中心に全国各地で開催しています。また、NHK Eテレの「100分de名著 平家物語」(2019年5月)の講師を務めるなど、幅広く活躍されています。
そんな安田先生に、今回は「古事記」をテーマにご講演いただくことに。改元以降、日本の古典が注目されるようになったことに加え、安田先生の人気も相まって、申込み開始直後から応募が殺到し、10月に入る頃には満員に!当日もたくさんの参加者にご来場いただきました。
講演では、「古事記の中の漢字」、「古事記と『旧約聖書』」、「身体感覚で読む『古事記』」、の大きく3つの話をしていただきました。「古事記の中の漢字」では、古事記の本文中に現れる言葉の「音」や用いられた漢字に焦点を当てた話を、「古事記と『旧約聖書』」では、「創世記」と比較する形で古事記を読み進め、古事記に見える古代の日本人の考え方や「心」についてお話しいただきました。古代の日本人や古典が、より身近に感じられる内容でした。
(安田先生の講座は、パソコン等を使わず、板書で進めていくスタイルでした。)
ただ安田先生が古事記を読み進めるだけではなく、時には古事記やヘブライ語で書かれた「創世記」の一節を参加者皆で音読したり、時には古事記の「国生み」の一節を安田先生とお弟子さんのお二人で能のように舞ったりと、まさに身体感覚を使いながら古事記を味わう講座でした。実際に自分の口で声に出して読み、描写のとおり舞う先生の姿を見ることで、古事記への理解がより深まったように思いました。
今回の講座の中には、「創世記」の他にも、漢字の由来にもなった甲骨文字で書かれた中国の逸話や、楔形文字で書かれたシュメール語の神話など、古今東西様々な古典の話が登場しました。参加者の皆さんからも「安田先生の知識の広さに驚かされた。」といった感想が多数聞こえてきました。
先生の講座の後には、図書館ミニ講座「古事記へのいざない」と題して、当館の司書から、図書館での古事記の調べ方についてご案内をしました。「古事記を現代語で読んでみたい」、「古事記について調べたい」、そんな時の調べ方や参考になる資料をご紹介しました。
このミニ講座で紹介した資料は、県立久喜図書館で発行している「調べ方案内 Milestone No.53」に掲載されています。ご興味のある方は、ぜひご一読ください。
また、この講演会にあわせ、2階公開図書室では資料展「古事記へのいざない」を開催しました。入門書から専門書、児童書まで、古事記に関する様々な資料を取り揃えました。さらに、国内の図書館でもあまり所蔵のない貴重な和装本も展示しました。
すでに展示は終了していますが、現在も展示資料リストを配布しています。こちらも古事記について調べる際の参考になりますので、ぜひお手に取っていただければと思います。検索機で調べるだけでは出会えない、魅力的な資料に出会えるかも?
安田先生のユニークかつパワフルなお話のおかげで、講演会は興奮のうちに幕を閉じました。受講した参加者の方からも「ただの解釈ではなく、多方面から切り込んでいくのがおもしろい!」「演じたり、能のこととあわせて話を進めてゆくのがとても素晴らしい構成でした。」「生のお声の力と魅力あふれる内容に聴き入りました。」といった感想が多数届きました。また、「続きもぜひ聞きたいです。」「続編の開催を!」といったお言葉も。
安田先生、そしてご参加いただいた皆様、ありがとうございました!